整形外科

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変形性膝関節症

このコーナーでは変形性膝関節症という膝関節の痛みを起こす病態について、御説明差し上げたいと思います。

原因

まずはその原因、危険因子、発生率および治療のなかで「自己管理」というテーマでお話しします。

四足歩行の動物が進化し、二足歩行となった人間という動物は、一生のうちに必ず膝と腰の痛みを経験するため、「膝と腰の痛みは人間の運命」とも言われています。個人差はありますが、男女とも60~70歳を過ぎると膝関節の軟骨がすり減り、骨や軟骨の変形が進んで関節の痛み、腫脹(はれ)、可動域制限(曲げ伸ばしの制限)、痛みによる歩行障害などが起こってきます。多くの場合、軟骨のすり減りは関節の内側に始まり、下肢は内反(O脚)変形となります。この様な状態を変形性膝関節症といい、日本では2千数百万人の患者様が存在するとも言われています。

変形性膝関節症のレントゲン写真と正常な膝のレントゲン写真

正常な膝関節は、大腿骨(ももの骨)と脛骨(すねの骨)の関節の隙間がしっかり開いています。変形性膝関節症になると、この隙間が少なくなっていき骨と骨がこすれて痛みが出てきます。

危険因子、発生率

変形性膝関節症発生の危険因子・発生率として年齢(加齢により進行する)、性別(男性より女性のほうが1~2.5倍高い)、肥満(男女ともに肥満者のほうが高い)、職業(重労働者に発生率高い)、運動(膝に負荷がかかる運動量が多い人に高い)、下肢筋力(筋力が弱いと高い)など様々な要因があると言われていますが、まだすべて解明されていません。変形してしまった”かたち”を根本的に治すことはできませんが、”痛み”という症状を和らげるための方法はいくつか存在し、この治療は保存療法と手術療法のふたつに分けられます。

保存療法

自己管理

まず保存療法のうち自分でできる治療として、なるべく痛みの少ない状態を保つという自己管理があります。これには体重の管理、痛みを我慢して長歩きや正座をしたりしない、膝を冷やさないようにする、歩行時は杖を使用、階段上り下りは手すりを使用するなどがあり、ちょっとした工夫で十分可能と思われます。

薬物療法、リハビリテーションおよび装具療法

次に変形性膝関節症に対する保存療法のうち、薬物療法、リハビリテーションおよび装具療法についてお話しします。

まず薬物療法ですが、主に痛みや炎症を抑える薬である「消炎鎮痛剤」を使用します。具体的には外用薬(ぬり薬・はり薬)、内服薬(飲み薬)、坐薬(肛門から挿入)、筋肉注射などがありますが、体内に入る経路は違ってもすべてからだに吸収され痛みを抑える効果が期待できます。医師は痛みの程度や年齢により薬物の投与量を調節し患者様に処方します。

また直接膝関節に注入する注射もあります。これは「ヒアルロン酸ナトリウム」といい、関節液中の成分で軟骨の潤滑性を保つ役目をします。1~2週に1回注射し、5~10回ほど継続します。日本で開発され、唯一医薬品として承認されている治療材料です。

次にリハビリテーションについてのお話しです。変形性膝関節症になると膝関節の曲げ伸ばしが制限され、下肢全体の筋力も低下しその結果歩行障害が起こることはお話ししましたが、変形した関節は何もしないと更に動きが悪くなり、筋力低下も進んでしまいます。現在の関節可動域(関節の動き)と筋力を維持・向上することはとても大切ですので、関節可動域(曲げ伸ばし)訓練、大腿四頭筋(太ももの筋肉)トレーニングなどは必ず行っていかなければいけません。当院ではリハビリテーション部で理学療法士が直接患者様に指導しています。

最後に装具療法ですが、膝関節の安定性を向上するため膝に直接装着する装具や、O脚変形矯正目的の足底症具(足の裏に装着)などがあり、変形の程度に応じて装具の種類を選択します。

リハビリテーションの様子

手術療法

最後となりますが、変形性膝関節症に対する手術療法についてお話しします。

変形性膝関節症において、保存療法では膝の痛みや歩行障害が改善しない場合は手術療法が選択されます。

手術療法にもいくつかありますが、大きく3つに分かれます。

関節鏡手術

まず第1番目は関節鏡手術です。関節鏡とは関節の中を観察する内視鏡のことで、これは日本で開発・研究が進められ世界に広がった技術です。変形性膝関節症の程度が軽い場合に行われますが、関節鏡を関節内に挿入し関節内を観察、半月板というクッションの痛んだ部分を切除したり、骨の表面の軟骨病変に対する処置をすることが可能です。

脛骨(すねの骨)骨切り術

第2番目は脛骨(すねの骨)骨切り術です。これは内反(O脚)変形を呈した下肢に対し、脛骨の矯正骨切り術を行い外反(X脚傾向)することにより膝関節の痛みを軽減する方法で、軽度~中等度の変形性膝関節症に対して選ばれます。

人工膝関節置換術

第3番目は人工膝関節置換術です。これは60歳代~90歳くらいまでの年齢で、保存療法はもちろん関節鏡手術や骨切り術では痛みを取ることが困難な末期(進行期)の変形性膝関節症に対して行われる「最後の切り札」です。変形した関節表面を取り除き金属製の人工関節に置き換える手技で、痛みを感じる関節の部分がなくなるため、生涯「痛みのない膝」で過ごせる可能性もあります。

脛骨骨切り術後のレントゲン写真と人工膝関節置換術後のレントゲン写真

変形性膝関節症は、人間である限り年を取れば全員もれなく発症する病態で、年齢が若返ることはあり得ません。しかしこれによって起こる「膝の痛み」をあきらめる必要は無く、変形性膝関節症の程度に合わせた治療を選択する事により、必ず痛みから解放される方法があると思います。あなたに合った治療法があります。是非我々整形外科医に御相談下さい。

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